2011年から2023年の日本から海外輸出された車の台数増減とその要因

日本から海外への中古車輸出は、グローバルな自動車市場における重要な一部を占めており、2011年から2023年にかけて顕著な変動が見られます。このコラムでは、その期間中の輸出台数の推移を、各年の世界情勢と照らし合わせながら解説していきます。

総計の推移

2011年から2023年までの総輸出台数は、857,779台から1,536,472台へと増加し、12年間で約80%の増加を見せています。特に2023年の急増は、前年の1,235,660台から約25%増加しております。円安によって日本の中古車が海外市場で相対的に安くなり、競争力が増した結果、海外からの需要が大幅に増加して2023年の輸出台数の増加に繋がったと考えられます。

• 2011-2013年: この期間は、世界的な経済回復が進行していた時期であり、日本からの中古車輸出も着実に増加しています。2011年の857,779台から2013年には1,163,109台まで増加しました。

• 2014-2016年: 2014年から2015年にかけては、世界経済の不安定さや為替変動の影響で輸出台数の増加が鈍化しましたが、それでも1,283,390台から1,254,047台の間で高い水準を維持しています。

• 2017-2019年: この期間は、再び増加傾向が見られ、特に2018年には過去最高の1,326,597台に達しました。しかし、2019年には1,295,852台と若干の減少が見られます。

• 2020-2021年: 新型コロナウイルスのパンデミックが世界中に影響を与えた2020年には、輸出台数が1,062,064台と大幅に減少しましたが、2021年には1,224,924台に回復しています。

• 2022-2023年: 2022年以降は、コロナ禍からの回復や円安による価格競争力が高まったため、新興国市場での需要増加により輸出台数は再び増加し、2023年には1,536,472台と過去最高を記録しました。

世界情勢の影響

世界情勢は中古車輸出市場に大きな影響を与えており、特に以下の要因が顕著でした

（１）  為替レートの変動

円安が進行することで、日本の中古車が海外での価格競争力を高め、輸出台数の増加に寄与しました。

（２）新興国市場の需要

特にアフリカやアジアの新興国における自動車需要の拡大が、日本からの中古車輸出を支えています。モンゴル、ケニア、タンザニアなどの国々への輸出台数は、これを裏付けるものです。

（３）  地政学的リスク: ロシアや中東地域への輸出は、政治的な緊張や制裁などの影響を受けていますが、それでも一定の輸出規模を維持しています。

ロシア：ロシア向けの輸出台数は、2014年の128,312台から2015年の49,142台へと急激に減少しています。この減少は、2014年にクリミアの併合をめぐる国際的な制裁が課されたことと一致します。制裁措置や経済的な不安定性が輸出に影響を与えたと考えられます。ロシアへの輸出台数が2022年から2023年にかけて増加しているのは、いくつかの理由が考えられます。

ミャンマー：ミャンマー向けの輸出台数は、2016年の124,212台をピークに、その後急激に減少し、2020年には26,587台、2021年には13,226台まで減少しています。この変動は、ミャンマー国内の政治的な不安定性や国際的な圧力が影響を与えた可能性があります。

スリランカ: スリランカ向けの輸出台数は、2014年の34,243台から2015年の59,338台へと急増した後、2020年には12,613台、2021年にはわずか1,113台まで急減しています。これは、スリランカの経済危機や通貨の急落が原因と考えられます。

将来の日本からの中古車輸出について展望

将来の日本からの中古車輸出について展望を考える際、いくつかの重要なトレンドと要因が浮かび上がります。JETROのレポートや分析から得られる知見に基づいて、以下のようにまとめることができます。

1. 新興国市場の成長

新興国、特にアフリカやアジアの国々での自動車需要の増加は、引き続き日本の中古車輸出にとって重要な推進力となるでしょう。これらの地域では、新車よりも価格が安い中古車への需要が高まっており、日本製の中古車は品質と耐久性で評価されています。この需要の高まりは、輸出台数のさらなる増加につながる可能性があります。

2. 為替レートの変動

為替レート、特に円の動向は、日本からの輸出競争力に直接的な影響を与えます。円安が進行すれば、日本の中古車は海外市場で価格競争力を高めることができ、輸出が促進されるでしょう。逆に、円高が進行すると、輸出台数の減少リスクがあります。

3. 環境規制と技術の進化

環境規制の強化や電動化の進展により、特定の国々では内燃機関を搭載した中古車の需要が減少する可能性もあります。ただし、これらの規制は同時に、特定の地域での中古車市場のニーズを変化させる可能性があり、特定の国や地域に焦点を当てた輸出戦略が求められるでしょう。

4. 地政学的リスク

ロシアや中東地域に対する地政学的な緊張は、これらの市場への輸出に不確実性をもたらす要因です。しかし、適切なリスク管理と代替市場の開拓によって、これらのリスクを乗り越えることが可能です。

5. デジタル化とリモート販売の強化

コロナ禍で加速したデジタル化の流れは、今後も重要な要素となります。オンラインプラットフォームを活用した販売や、オンラインオークションの活用が一層進展することで、物理的な制約を超えた新たな市場の開拓が期待されます。

これらの要因を踏まえ、今後の日本からの中古車輸出は、柔軟な対応と戦略的な市場選定が成功の鍵となるでしょう。JETROのレポートや市場分析を参考にしながら、より具体的な戦略を立てることが重要です。

２０１１年から２０２３年の主要国の中古車の輸出台数

詳細については、お気軽にお問い合わせください。

いつもジャパンキャリアをご支援いただき、誠にありがとうございます。

ジャパンキャリアチーム一同